フラクタル画像圧縮技術

フラクタル画像圧縮について説明する前に,まずフラクタルについて説明する必要があります.

フラクタルとはBenoit Mandelbrotによって作られた造語で,自己相似性,あ るいはその性質を持つ図形を表します.ここで言う自己相似性とは,「ある形状に回転移動, 対称移動,拡大操作,縮小操作を行なってできた形状が,別のある部分にも現れ る」という性質です.言葉で聞くと,何が何やらさっぱり分かりませんね.おおざっぱに言うと, 「図形の中に似ている所がある」ということです.有名なフラクタル図形の1つに, 「マンデルブロ(ート)集合」というものがあります(先程でてきたMandelbrotでピンときた人 は,かなりの通?です).この図形は,拡大していくと同じ図形が現れてきます. 例えるなら,「人の細胞を顕微鏡で拡大して見たら,そこにまた人が見えた」といった感じです.

全ての画像には.こうしたフラクタルの性質が少なからず存在します. その性質を利用して画像を圧縮する方法が「フラクタルを用いた画像圧縮法 (フラクタル画像圧縮法)」です.

では,フラクタルの性質をどのように利用したら画像圧縮が可能になるのでしょうか? 実際に説明するとかなり難しいので,はしおって説明します. フラクタルとは,先程説明したように.「図形の中に似ている所がある」という性質です. そこで,画像をいくつかの正方形のブロックに分割し,それぞれのブロックに ついて,同じ画像の中から「最も似ているブロック」を見つけます. この「最も似ている」というのが重要で,似てるのがなくても ともかく「最も似ている」ブロックを探し,そのブロックについての情報を記憶します. 例えば,ブロックAに対してブロックBが最も似ていた場合,「ブロックAは,ブロックBを 90度回転させて全体的に濃くしたものと最も似てる」といった感じの情報を記憶します. (ニュアンスだけでも伝わったでしょうか?) こういった情報を画像データの代わりに使うことによって,データ量を削減します.

フラクタル画像圧縮は,符号化時間(圧縮するのにかかる時間)がJPEG圧縮 よりも長いといった短所があります.しかし,高圧縮時には,JPEG圧縮より高品質 な復元画像を得ることができるという長所があります.この長所をいかに伸ばし, 短所をいかに縮めるかが,研究のポイントとなります.

研究では,似ているブロックを探す条件を変えることによって,より高圧縮時 に高画質な画像を生成できるような,フラクタル画像圧縮を考えています. 以下に,JPEG画像圧縮とフラクタル画像圧縮の画像を載せます.2つの画像 のデータ量は同じです(400分の1に圧縮してあります).


JPEG画像圧縮




フラクタル画像圧縮